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kuniko plays reich

(LINN CKD385)

加藤訓子とリンレコーズによるデビューアルバム。スティーブ・ライヒのカウンターポイント作品代表作三曲を世界初でパーカッション用にアレンジした作品。ライヒ自身が「訓子は、一流のパーカッショニストである。」と言わしめた加藤訓子の演奏と音楽センスが光る。ライヒ75の同年2011年7月グローバルリリース。同年リンレコーズのベストセラー。

第12回サントリー佐治敬三賞受賞

BEST OF 2011 by Linn Records

kuniko plays reich (LINN CKD385)

  1. Electric Counterpoint Version for Percussions – Movement I: Fast | Composer Steve Reich | Soloist KUNIKO |  06:53
  2. Electric Counterpoint Version for Percussions – Movement II: Slow | Composer Steve Reich | Soloist KUNIKO | 03:22
  3. Electric Counterpoint Version for Percussions – Movement III: Fast | Composer Steve Reich | Soloist KUNIKO |  04:37
  4. Six Marimbas Counterpoint | Composer Steve Reich | Soloist KUNIKO | 16:26
  5. Vermont Counterpoint Version for Vibraphone | Composer Steve Reich | Soloist KUNIKO | 09:48

kuniko plays reich (LINN CKD385)

Booklet Notes

 

MEETING STEVE REICH

かつてベルギーに居たころ、一緒にプレイをしていたアンサンブル・イクトゥスでは、たくさんのライヒの作品を取り上げ、そのほとんどを私も一緒に演奏してきた。

ブリュッセルMIDI駅からトラムに乗り、Van Volxenlaan の練習場に通うある日、イクトゥスの練習場では数日後のブリュッセルの最も権威あるパレ・デ・ボザールでの大きなコンサートを控えていた。オール・ライヒ・プログラム、大曲「Tehillim」、「City Life」をかかえ、リハーサルの真っ只中、そこにジーンズにキャップでひょっこり現れたスティーブ・ライヒ、それが私が初めて彼に会った瞬間である。

そのとき、「City Life」の打楽器パートを真ん中で演奏する私を見て、「こんなに小さな女の子が、なんてパワフルなんだ!」と何か彼の目に留まったらしい。演奏会当日、リハーサルでは会場の音響との音作りにシビアな空気が流れ、プレイヤーの間にも何ともいえない緊張感が高まる。そのままコンサートへ突入、ライヒ氏と一緒に演奏した「Pieace of Woods」では、基となるリズムをひたすら刻む私の手元にびたっと寄って来る、彼のリズムの刻み方はとても独特だ。大盛況に終わった演奏会の後、すぐさま舞台裏の楽屋来て、大喜びでこの私をひょいっと抱き上げたことを今でも忘れない。

その翌日、偶然にもベルギーからロンドン行きの飛行機が一緒になり、ヒースロー空港での乗り換え時、しばらく他愛も無いことをチャットしたのを覚えている。

その後もイクトゥスのライヒレパートリーは広がり、Drumming, 18 Musicians, Six Marimbas, などなど、彼らと同じ屋根の下で活動する世界的なコンテンポラリーダンスグループROSASとの共作でもたくさんのライヒナンバーが取り上げられ、世界各国、フェスティバルなど世界中を回った。私がヨーロッパを去った今も、イクトゥスではライヒの作品は演奏し続けていることと思うが、彼らの演奏はいつもCool!だ。

私も一人になった今、ふとまたライヒを演奏したくなり、一人で出来る最大限のことに挑戦してみた。こんな作品集ができあがったのを密やかに喜びつつ、この新たなアレンジメントに寛大な心と大きな賛辞を送ってくれたスティーブ・ライヒ氏に敬意と感謝をこめて。そして録音から作品作りにおいて最後まで携わってくれた素晴らしいエンジニアたち(ジョージ・マッセンバーグ、深田晃、オノ・セイゲン、長江和哉各氏)に心からお礼を申し上げます。

 

WORK WITH STEVE REICH

Electric Counterpoint version for percussions (1987/2009)

1987年に書かれたこの曲はオリジナルはギター、そして世界のレジェンドギタリストパットメセニーのために書かれ、演奏されていたことは皆さんの知るところである。2009年に暖めてきた企画「STEEL DRUM WORKS」のメインプログラムとしてこの「エレクトリック・カウンターポイント」をスティールパン~ビブラフォン~マリンバという構成でやってみたいと思った。

ベルギー以来(最後に会ったのは2000年頃NYのBlooklynだったか?)久しぶりに手紙(すでにメールである)を送り、この構想をスティーブに話したところ、すぐさま返事が返ってきたことにまずは驚きと感動(!)、しかし実際この私のアイデアには難色を示された。

それは、カウンターポイントというシリーズは一つのアイデンティカルな楽器によるブレンドである、というコンセプトに基づいていること、それからスティール・パンという不安定な楽器がどれだけうまく機能し、効果を得られるのか、ということであった。

まずはライヒの作品コンセプトを崩さず、どうしたら自分のイメージするものができるだろうか、再度よく考えなおし、スコアを見つめ、考えぬいた構成はこうだった。各楽章ごとメイン楽器を混ぜず、楽章ごと後半にはその先に移るべく楽器が背後波のように出没する。

PartⅠは、スティールパンを主とする8パート、そして背後に流れるWave sound(冒頭、各楽章の後半に象徴的にでてくるさざ波のような美しいコードの移り変わりを私はこう呼んでいる)をビブラフォンで、第2楽章ではそれを受け継いでビブラフォンが主とした9パート、そしてそれに被さるWave soundはマリンバ、PartⅢはマリンバでメインの4パートとベース、途中のオリジナルギターカッティングの和音にはヴァイブと、それらのアンサンブルにより曲が完結する。

最初にもらったスティーブからのメッセージ「まずは君の頭の中にあるサウンドを音にして、そしてデモを送りなさい」という言葉に丸3日徹夜で一人で延々と続くパートをひたすら重ね、完成したものを送ったところ、すぐさまに返事が来た!「Very Good! your version of Electric Counterpoint works very well.」-面白いと思ってくれたようだ。

こうして晴れてスティーブと出版社Boosey&Hawksの正式承認もいただき、私の住む街ナッシュビルを代表するBlackbird Studioというレコーディングスタジオに駆け込んだ。ここには世界に誇るジョージ・マッセンバーグという凄腕のエンジニアが居る。何でも10代の頃にパラメトリックEQを作りだした天才エンジニア、それだけでなく、エンジニア・プロデューサーとしてもフィル・コリンズ、ビリー・ジョエル、アース・アンド・ファイアなど80年代の超ビッグネームアーティストの数多くのレコーディングに携わっている。その後、彼の構想に基づくスタジオを作りナッシュビルに居を構えていた。聞いてみるとスティーブ・ライヒのCD作りをずっと手がけていたボブ・ラドウィックとも知り合いだったことも、奇遇に思った。

レコーディングは丸二日夜中までかかり、全身へロヘロになりながら、何とか全パートを録りきったという感じだったが、ジョージもこうしたワークに非常に興味を示してくれ、張り切って「できるだけいい音で録ろう!」と、192k/24Bitで、リバーブ用マイクもたくさんセッティングしてくれた。それがこのハイサンプルレートでの録音のスタートでもあった。その後、まずは自分でミックスしたデモを送ったところ、すぐに帰ってきた返事は「Bravo! You made a beautiful arrangement…」、本当に嬉しかった。

このCDには、ジョージ・マッセンバーグとも親しく、経験と実績の高いベテランの深田晃さんにミックスをお願いした。プランを深く相談し、丹念にスコアを掘り下げ、丁寧に仕上げてくださった。

 

Six Marimbas Counterpoint (1986/2010)

この作品はオリジナル「Six Marimba」は6台のマリンバ、6人の奏者によるライブ用の作品である。なかなかマリンバ6台というアンサンブルは、舞台上の各楽器の距離間、このマリンバの音質の特性により、このミニマルなリズムや音のディテールの絡み合いが実際のライブではその効果を出すのが大変難しいと感じていた。

ある時ある映像とのセッションのため、すべてのパートを一人で弾いて録音したらどうだろう?とふと思いついた。このアイデアに対して、スティーブは「プラクティカルなアイデアだ!」と賛同してくれ、すぐさまアプルーバルをくれた。最初は私一人で6人分の演奏をしようとだけ思っていたのだが、スティーブの提案により、「新たにソロパートを作り、テープとライブソロという形にしたら世界中の人が一人でもライブでプレイできるだろう」とアレンジの一切を任された。

早速、今度は日本のオノ・セイゲンさんのサイデラ・マスタリングのスタジオでこの計画に基づくレコーディングを行った。セイゲンさんは、若い頃から自分のスタジオを青山に築き、マスタリング、録音、ライブパフォーマンス、オリジナル作品の製作、製品開発にも力を注いでいる。ハイレゾリューションレコーディングの(1Bitレコーディング推奨)の話をよく聞いていた。NYでジョン・ゾーンとのコラボレーションを行うなど、世界中に友達がいる。実は深田さんもジョージ・マッセンバーグも皆親しい間柄だったことも分かり、不思議な繋がりと連帯感が生まれた。

滑り出しもよく、レコーディングはセイゲンさんの抜群の直感的感覚により丸2日で2つのヴァージョンが出来上がった。(この16分間の曲をひたすら12回弾くだけでも相当な労力ではある。)そしてエディティングを済ませ、軽くマスタリングをし、ある程度仕上げたつもりでスティーブにデモを送った。ところがすぐさま戻ってきた返事はいきなりNG!安易にリバーブをつけてしまったためにOvertone が多すぎたのだ。

そこで今までさんざん自分でテストレコーディングした素材をもう一度、一から聴きなおし、音のディテールと構成を叩き込み、もう一度一からミックスを自分でやり直してみた。とにかくアタックと強さが要求されていたが、楽器自体の響きは失いたくない。

実はこの「Six Marimbas」は基は「Six Pianos」だったということ、スティーブから思いもよらなかった強烈なコメント「Be bold!」、一気に目が開いたような気がした。それまで迷っていたVersion1とVersion2(マレットの種類による音色の違い)の方向性もクリアになり、Version1(こちらはグラデーションのあるむき出しのラバーマレット=実はADAMSマリンバのマレットの芯で、私自身ラバーマレットとして使用しているものである)に集中し、これをよりピアノ6台が一斉に鳴り響き、その音が差し迫るようなイメージを想像しながらMixしていった。

数日かけて悪戦苦闘して作ったデモに対して、すぐさま「Bravo! This is wonderful sound. It’s ready to go.」とまた嬉しい言葉が帰ってきた!同時にこの「シックスマリンバ・カウンターポイント」という命名もいただいた。

 

Vermont Counterpoint version for vibraphone (1982/2010)

オリジナルはフルート(+ピッコロとアルトフルート)のための代表作、NY Counterpointに続いて、演奏される機会も最も多い曲ではないかと思う。また様々な楽器へのアレンジメントも多く出ており、確か、ベルギーで活動していたころ、イクトゥスとROSASの舞台についてNYに行き、BAMで演奏したときのレセプションでスティーブに「この曲ならマリンバでやってもよいよ」、といわれた記憶がある。

実は最初に手がけた「エレクトリック・カウンターポイント」よりも、まずは先にこの曲をやろうと思っていた。但しマリンバだと、何か今一つ音作りが充実しない気がしていた。全体のコンセプトとも言えるロングトーンの音のつながり、タンギングなど、オリジナルのフルートの奏法で表現されるリズムや音の組み合わせが全体の曲の構成と色彩感を作りだす。それがマリンバではどうしても表現しきれない。それでもデッドストロークなど駆使して奏することなども考えたが、曲のテンポはかなり速く、もたもたしていては躍動感すら出ない。

そこである時、ふとビブラフォンでペダリングとミュートなどうまく使い分けてみたらどうだろう、と思いついた。ビブラフォン特有のきらびやかさは意外にも表現の幅の広さを持つ。少し試してみたところ、これはいけそうだ!と思った。ところが早速スコアを深く読みだしてみると、今度は3オクターブの従来のビブラフォンでは、とても曲全体の音域をカバーできない。移調も考えたが、曲のイメージやコードの移り変わりはやはりオリジナルが一番よいと判断した。そして最近出会った4.3オクターブのビブラフォンの独特な音色に何か惹かれるものがあり、このビブラフォンを使用し、それにさらにオプショナルのHigh Dを付け足して一台ですべてを奏する案と、他の奏者や汎用性を踏まえてピッコロパートをグロッケンで奏するという2つのバージョンを考えだした。冒頭はノーマルなヴァイブから力強くスタートし、時々きらびやかな高い音が折り重なる。その後柔らかな音色を経て、最後は硬質のゴムのマレットに移行し、グロッケンのようなきらきらとしたサウンドが徐々に全体を包みこみ、クライマックスを迎える。最もライヒ作品らしい曲想である。(ドラミングパートⅠの最後の構想に似ているだろう。)

この曲を録っていただいた長江和哉さんというエンジニアは名古屋芸術大学サウンドメディアコースで教鞭をとられており、録音もこの学内のスタジオを使用した。この話を持ちかけたところ、私のやろうとしていること、そしてこのCDのコンセプトに大変賛同してくださり、また作品についても録音方式についても、大変熱心に勉強と研究を重ね、意欲的に取り組んでくださった。スティーブも「ヴァイブでのヴァーモント、これはセンセーショナルだ!きっと世界中の人が演奏するようになるだろう。」と大変気に入ってはくれたものの、最終的に上がるまでに何度も何度も同じところのNGが続いた。最後に教えられたことは、「この曲はオリジナルはフルートのために書かれている。アルトフルートは通常フルートのように決して強くでない。だからビブラフォンならアルトは少し弱く、フルートはそのままで、ピッコロは強く―」基本的なことが私の頭には欠けていたのだ。

2011年が明けたとき、年末からほとんど6日間は昼夜絶えずミックスを続けた。スティーブより「Congratulation!」そうして素晴らしいビブラフォンヴァージョンができあがった。長江先生とスティーブ・ライヒ氏にはとにかく最後まで辛抱強くお付き合いいただき、本当に頭が下がる思いである。

愛知県は自分の出身地でもあり、何かの縁も感じつつ、この3つの作品を通じて自分の今居るナッシュビルから世界へとつながり、そこから何か一本の筋が私の体の中に通された気がした。すべての曲において192k/24bit録音とこの膨大なファイル数に挑み、サラウンドを手がける巨匠エンジニア達とワークできたことは、本当にかけがえのない私の宝である。そしてこの間、音楽への情熱はもとより、常に揺ぎ無い厳しさと適切なアドバイス、そして賛辞を送り続けてくれたスティーブ・ライヒ氏に心から感謝を捧げたい。

2010年4月、ベルギーを離れて以来10年ぶりくらいだろうか、カナダ・トロントで再会した75歳になったスティーブは相変わらずジーンズとキャップ、大ホール満杯の観客から盛大な拍手を浴びていた。厳かな笑みを浮かべたその姿を私も客席から見ながら何か感動を覚えた。

そして忙しい中、私のアレンジした「エレクトリック・カウンターポイント」を聴きにリハーサルスタジオまで駆けつけて来てくれた。「大変なワークをありがとう。」とにこやかに握手を交わした手は細くて柔らかく、ほんのり温かかった。

2009年1月に始まったレコーディングから約2年半の歳月を経て、正式に皆さんの耳へと届けられる運びとなったことは何よりの喜びである。世界中のたくさんの人々がこのCDを聴いてくれることを心から願っている。

© 2011 KUNIKO

Recording Information

All tracks are recorded at 192kHz / 24bit audio

Mastering: Bastiaan Kuijt, BK Audio, NL

Executive Producer: Philip Hobbs at Linn Records

All original music and supervision by Steve Reich

Arranged, performed and produced by Kuniko in consultation with Steve Reich

Cover photograph by Michiyuki Ohba

Design by John Haxby

Production Coordination Kim Campbell at Linn Records

 

Electric Counterpoint version for percussions

Recorded January 28 & 29th, 2009 at Blackbird Studio, Nashville, U.S.A..

Engineered by George Massenburg | Kazuri Arai, assistant engineer

Stereo mix by Akira Fukada

Surround mix by George Massenburg

Instruments, 1-Tenor pan, A pair of Guitar pan, Vibraphone and Marimba

 

Six Marimbas Counterpoint

Recorded November 24 & 25th, 2009 at Saidera Paradiso, Tokyo, Japan

Engineered by Seigen Ono

Mixed (stereo & surround) by Seigen Ono at Saidera Paradiso, Tokyo Japan.

Instruments, Marimba

 

Vermont Counterpoint version for vibraphone

Recorded March 28 & 29th, 2010 at recording studio, Nagoya University of Art, school of music, Nagoya, Japan

Mixed (stereo & surround) by Kazuya Nagae

Instruments, Vibraphone

 

Credit

This arrangement made by permission of Boosy & Hawkes Music Publishers Ltd.

 

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